四国山岳紀行 No242-020419 平家平(へいけだいら) 1693m △3(平家平)
                愛媛県新居浜市/高知県いの町/大川村 地図 日ノ浦(北東)  山岳紀行トップヘ


           縦走路よりの平家平                  頂上より左から寒風山冠山笹ヶ峰チチ山

石鎚山系縦走路の東の端に位置する平家平は800年前、壇ノ浦の戦いに敗れた平家の落人が安徳帝を擁護して阿波から吉野川の支谷を彷徨しながら、辿り着いたのがここ平家平と言われており、この山の山名もそこから来ている。その後、越裏門(えりもん)から越智町の横倉山に移り住んだという伝説がある。山頂付近は森林限界を卓越した準平原で、遮るものの無い壮大な山岳展望は第一級であろう。この山の登山口は南の高知県側、北の愛媛県側、県境の東西の縦走路からとバリエーション豊富である。


          別子ダムからの平家平                      住友フォーレスタハウス

今回はナスビ平のカタクリの花の観賞を兼ねて、愛媛県側の別子山の中七番にある住友フォレスターハウスから、ナスビ平を経由して冠山からの稜線コースを辿る事にした。朝5時30分家を出発 、R11から R319に入り、法皇トンネルを抜けて金砂湖に架かる赤い平野橋を渡り、右折して県道6号線を快適に別子山まで走る。南光院辺りから道幅が狭くなるが全線舗装されたので随分と走りよくなった。西赤石山の日浦登山口を過ぎて別子ダム湖を過ぎると程なく別子山最奥の集落のあった中七番に着く。


          林床のショウジョウバカマ                    登山口の桜は今は満開

今は民家のあった跡地に住友フォーレスターハウスの駐車場として立派に整備されている。ここは施設利用者の駐車場であるので、登山者など一般の車は路肩の広い場所に駐車することになる。橋を渡ってフォレスターハウスに向かうと管理人さんが出迎えてくれた。ここ毎日大勢の人がナスビ平へカタクリの花を見学に訪れているとの事。今日は私が一番のりらしい。例の記帳を済ませて6時45分出発、新緑の白樺の並木が美しい中を指導標に従って、分岐から右に沢沿いのコースーを進んで行く。


        フォレスタハウスから登山開始                  最初の分岐は右に進んて゜行く

途中道が崩壊して迂回する所もあるがよく踏まれているので問題ない。暫らく沢沿いを進んで道は植林の中を急登して行き、旧馬道を横切って水平道を詰めて行く。岩場のコルを下って幾つかの桟橋を渡って行くと広くなった沢に出る。沢を横切って再び植林の中の急斜面を高度を稼いで行く。道が緩くなるとナスビ平に着く。林の中に敷地跡の石垣などが残っている。


          渓流沿いにしばらく進む                      桟橋を幾つか渡って行く

ここは一ノ谷を越えてゆく中持衆の宿屋があった所で、吹雪の夜に山女がなすびを売りに来たという妖怪譚の伝説から来ている。当時の人々の生活を想像しながら進んで行くと、ありました緩い斜面にカタクリの群生が一面に、この花は太陽光線が当たらないと開かず、朝早いので未だ半開状態だったがそれでも充分目を楽しませてくれた。近年カタクリ見物に訪れる人が多くなって、心無い人に踏み付けられたりしてその生育環境が脅かされており、保護のため苦肉の策として立ち入り禁止のロープが張られている。


              ナスビ平に到着                       カタクリの開花が始まる

特にカタクリは消滅は一瞬、蘇生は気の遠くなる年月を要する。管理人さんが特に心配していたのはそれにもまして煙草の吸殻のポイ捨てである。このような壮大な山で火事が起これば手の付けようがない事である。未だに吸殻が捨てられているらしい。このような自然の環境を守って行くためには一人一人のマナーが大切であるのは言うまでもない。皆がいつまでも気持ちよく山に入らせてもらうために。


        カタクリは春の妖精といわれる                   ナスビ平に群生するカタクリ

さてここから少し登った所に第二のカタクリ群生場所が現れる。先の場所より幾分時間が経過しているせいか、こちらの方が開花率が良いようだ。光を受けて反り返って咲く花弁は可愛らしく春の妖精と言われている。こうしている間にも数組のパーティが来て賑やかになってきた。充分目を楽しませてもらったので稜線の一の谷越えへと向かう。


         春浅き森林を稜線へと向かう                    林床に咲くエンレイソウ

周囲の芽吹き始めたばかりの林が清々しい。歩きよい水平道は右にカーブして一旦沢に下り、東側の尾根に取り付いてロープの張られた崩壊箇所を過ぎ、支尾根をトラバース気味に進んで行くと、「あかがねの川協議会」が設立した銅山川の源流碑が新しく設けられていて、岩の間から清水が湧き出している。


         あかがねの銅山川源流碑                     ロープの張られた崩壊場所

そこを過ぎると道は急になりシャクナゲの間を進んで行くと一の谷越えに向かう稜線に出る。ここまでナスビ平から1時間、登山口から3時間の行程である。振り返ると東赤石から二ッ岳にかけての山容が木の間越しに見えている。稜線を右にとれば600mほどで一の谷越えに行けるが、今回は左に稜線道を進み冠山を経由して平家平へと向かう。


          稜線のシラベの中を行く                       快適な稜線を冠山へ

シラベの林を抜けると風景は一変して眺望の開けた尾根歩きとなる。西に一の谷越えから続くチチ山、笹ヶ峰のヒメザサの緑一色の稜線が素晴らしい。南は深く落ち込んだ谷を隔てて四国中央の山々が幾重にも連なる。東はこれからアタックする冠山の岩山が手招きしている。途中に一部急坂があるが何処までも広がる山岳展望の開放的な稜線歩きは退屈しない。


           大岩を冠する冠山                          冠山頂上は狭い

目の上に迫る岩峰を登り詰めれば1736m の冠山の頂上である。西側の露岩の上に立てば 360度の展望が開ける。足元が切れ落ちているので転落しないよう充分注意しょう。標高が高いだけに高度感が満悦できる。ここで昼食を摂りながら素晴らしい山岳展望を満悦して冠山を後に平家平へと向かう。


                         冠山を後に平家平に向かう

緑の笹原の稜線に一筋の縦走道が平家平まで延びているのが確認できる。その中ほどにこちらに向かって来る一組の夫婦連れが小さく見えている。中ほどの小ピークを越えた辺りでこのご夫婦に出会った。ご夫婦もナスビ平のカタクリを見に来たが朝早いと花が開いていないので、コースを逆周りしているとの事、なるほどと思った。南北に広がる山岳展望を堪能しながら1時間足らずで広々とした平家平に着く。


                       広い笹原が広がる平家平頂上

東端には環境庁の「笹ヶ峰自然環境保全地域」 の説明看板があり、三等三角点があって1692.6mを示す山名標識が側に立っている。振り返ると先ほど越えてきた冠山の右肩に笹ヶ峰、チチ山、沓掛山、黒森山、そして左肩に寒風山と伊予富士が、その間に瓶ヶ森と石鎚山が頭を覗かせている。そして延々と続く山並が重なり虚空の果てに消えている。


           頂上から東の眺望                         北に赤石峨蔵山塊

南には稲叢山、門山からなる大きな山塊が吉野川を隔てて横たわり、右奥に大橋ダムが光る。さらに東に目を移せばどっしりとした大座礼山が北に断崖層を伸ばして三ツ森山へと続いている。その向こうには二ッ岳から赤石山系の山々がダイナミックに連なる。眼下には別子ダムが青く光り、まさに遮る物のない 360度の眺望である。


        山頂でのどかに鳴くウグイス                    頭上をジェット機が飛んでいく

登った山を確認したり、未踏の山を推測したりと山岳展望は楽しいものである。笹原に腰を下ろして平家一族の流傍の辿路を眺めるのも良いだろう。そんなロマンが漂う平家平山頂である。誰も居ない気持ちの良い開放的な山頂であるので、時間の経つのを忘れ30分以上も無我の人となっていた。頭上を一基のジェット機が紺碧の空に白い飛行機雲を残しながら東へ飛び去って行った。


           広く刈られた稜線道                      ブナ林からは下山分岐がある 

下りは広く刈られた縦走路を東に下って行く。ウグイスが至近距離で鳴いている。ブナの林を過ぎてNo11送電鉄塔手前からの鉄塔巡視路コースを下る。道は整備されているものの急降下してNo12鉄塔、No13鉄塔まで順調に下る。対岸のアケボノツツジが満開で賑やかに花を着けている。ここからは益々急坂のジグザグの下りでうんざりする頃、桧林の尾根に出て再びジグザグを繰返しながら植林の斜面を下って行き、梯子とロープの急坂を下りると奥に滝の懸かった沢に下り立つ。


          満開のアケボノツツジ                       檜林から谷に下って行く

対岸の左岸に渡ってここからは沢沿いに進んで行くが、途中左に向かう鉄板を渡って行く道は巡視路なので、そちらに進まずに手前から沢の中に入り、沢の中の踏み跡を転石を跨いだりしながら下って行く。暫らく進んで右岸に出ると水平道となり、植林帯の中の笹の中を進んで行き、登山道と遊歩道とを分けるゲートを越えて遊歩道に入り、間もなく鉄橋の吊橋を渡って階段を上り詰めると今朝の分岐に出る。


          沢を横切り右岸に渡る                       最初の分岐点に戻る

桧林と白樺林を抜ければ登山口のフォレスターハウスに着く。下山記帳を済ませて温かいコーヒをご馳走になり、管理人さんにお礼を言ってフォーレスタハウスを後にする。7時間余りの歩行の充実した山行であった。振り返ると今日歩いて来た平家平の峰が斜陽に燦然と輝いていた。


       登山口のフォレスターハウスに戻る                歩いて来た稜線が見えている

《コースタイム》 登山口フォレスターハウス 1時間55分→ナスビ平 1時間→一の谷越え稜線
          50分→冠山 55分→平家平 40分→鉄塔分岐 20分→No12鉄塔 20分→No13鉄塔
           30分→滝下の沢 40分→登山口フォレスターハウス 歩行時間 約7時間20分
           駐車場 県道路肩 登山道 整備されているが一部難所もあり 難易度 12B45
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