四国山岳紀行 No231-011005 横倉山(よこぐらやま) 793m △3(金峰山)
                                高知県越知町 地図 大崎(南東)  山岳紀行トップヘ  


                        屏風岩と馬鹿試しの絶壁

横倉山は、高知県中部を流れる仁淀川の中流、越知町の街の西方に突き出るような独特の形の峰で聳えている。山の頂上付近は高知県の県立自然公園に指定され、杉の大木に囲まれた杉原神社やアカガシの原生林、アケボノツツジの自生地などがある。横倉山は4億年前に赤道付近にあった陸地が長い年月をかけて、現在の場所まで移動して激しい地盤活動のため出来たと言われている。


                        複雑な地層が観察できる

そのため、花崗岩、石灰岩、蛇紋岩などが複雑に入り組んだ地層をもち、4億年前の化石の産出や地質に合わせた草花が咲き、横倉山は 800種以上の植物の宝庫になっている。その植物の発見に尽くされた牧野富太郎博士が有名である。この横倉山の山容は霊山としての姿をしていることから、古くは平安時代後期から山岳信仰の対象の山である。


                        歴史を刻む横倉宮と御陵

さらには源平合戦で檀ノ浦の戦いで敗れた平家の落人が、幼い安徳天皇を擁護して隠れ住んだという伝説の山で、安徳天皇陵墓参考地として管理されており、地質、植生、歴史とロマン多い山で、3ヶ所の登山口には駐車場とトイレ、コースには案内板や標識も整備されていて、初級者から中級者まで楽しめる山である。

この山へは高知市からだと国道33号線を西の越知町街を抜けて越知橋を渡ると間もなく【横倉山自然の森博物館】の標識がある。ここで左手の「林道横倉長者線」に入り、6キロほど走ると、第一駐車場がある。すぐ先の山手に標識があり、ここからのコースは見晴らしが良い尾根コースとなる。今回のコースは第3駐車場からなので、さらに織田公園と第2駐車場を過ぎて終点の第3駐車場に着く。


                        第三駐車場から登って行く

駐車場は広く、登山口には鳥居と標識があるのでここから出発する。広く整備された道が杉原神社まで続いている。アカガシの巨木や、ハイノキやシロダモなどが茂る中を、15分ほどで杉の巨木の立つ杉原神社に着く。平家の守護神、熊野権現を祀る立派な造りの社殿、側の目通り周囲7.3m 樹高 50m の天を突く樹齢 800年の杉の巨木に思わず息をのむ。


                         杉原神社と杉の巨木

付近の林床にはアオキが多く、時節には赤い実をつけてよく目立つ。道端にはフタリシズカ、クルマグラ、コミヤマカタバミ等の群落が見られる。神社のすぐ西側には武家屋敷跡の広場に建てられた無人の山小屋があって炊事設備もある。近くには安徳水と名づけられた水場がある。この山小屋脇の山道を少し下りると杉の巨木の根本に大石があり、僅かではあるが石の下から水が湧き出している。


           横倉宮に続く階段                          山小屋横倉山荘        

昭和59年に「全国名水百選」(環境庁)に選ばれている。山小屋を過ぎて窪地のような所の側を上がって行き、御在所跡さらに田口社前の側を登って行くと横倉宮に向かう階段の下の鳥居の前の分岐に着く。真直ぐ長い急な階段を上がって行くと横倉山最高点に佇む、安徳天皇を祭神とする横倉宮がある。


           階段の奥に横倉宮                       牧野博士発見の横倉の木

天皇は23歳のとき、山上の行宮で亡くなられ同年、平知盛が玉室大明神宮として建立したとのこと。石灰岩の上に建てられた社の裏手は、通称「馬鹿だめし」と呼ばれるそそり立つ断崖絶壁となっている。社の右側から断崖の方へ回りこんで行くと、牧野博士が発見したヨコグラノキがある。社の前から左に少し下るとあずまやのある休憩所に着く。その前から西にトラバース気味に進んで行く。


                           安徳天皇御陵

断崖の下にある「平家の穴」に下る道を見送って進んで行くと、右側に立派な石段が見えてくる。110 段の広い石段を上がれば安徳天皇の墓所と伝えられる、御陵特有の明神鳥居のある玉垣に囲まれた平坦地の御陵に着く。周囲はアカガシの大木が茂り静謐な雰囲気が漂う。石段を引き返し右に取り、小さな流れを跨いで標識に従って10分程登ると畝傍山(うねびやま)眺望所に着く。


            小沢を跨いで行く                       馬鹿試しの断崖と兜岳

あずまやがあってここからの眺望は素晴らしい。間近に馬鹿試しの絶壁その向こうに兜岳、眼下には大桐川を堰き止めた桐見ダム湖、遠くに虚空蔵山などの山々、さらに晴れていれば須崎方面の太平洋を望むことが出来る。足元にはこの時節ミヤマママコナが紫紅色の花を着け、ツルシキミが赤い実を着けている。


                        ヤマママコナとツルシキミ

ここから更に西へ進むと分岐があって、左に行けば住吉神社へ、右に行けば空池に向かうが、周遊コースとなっているので、どちらに行ってもこの分岐に戻って来れる。右へコースを進んで行き、急坂を登りつめると石灰岩の露出した窪みのある台地に着く。空池と呼ばれる場所で4億年前の珊瑚礁の石灰岩が隆起して出来たと言われている。


                       空池付近には石灰岩が多い

辺りは地質に適応した珍しい植物も多い。大小の石灰岩の奇岩の間を通り抜けて小高い尾根を越えると、眺望が開けて前方の岩場の上には、安徳天皇の随臣が祀られた住吉神社の祠が見えて来る。西の嶽と呼ばれる岩場の社祠へは、ここから二つの鎖を伝って行くようになっている。ここからの眺望も先ほどの展望所以上に素晴らしいが、周囲は目も眩む断崖絶壁になっており、充分な注意を要する。


                     断崖上の住吉神社と眼下に桐見ダム

住吉神社手前からは東に下る道を辿って行くと先ほどの分岐に戻る。来た道を横倉宮まで戻って兜岳への道標に従い、尾根筋に沿って東側に進む。少し下って田口社と第一駐車場からの分岐を過ぎて、登り返して行くと三角点のあるピークに着く。ここから稜線上の快適な道を兜岳に向かって歩を進める。両側はアカガシなどの林が続き清々しい。


           急坂を頂上へ向かう                       三角点のあるビーク

林が切れて石灰岩が多くなって来ると夫婦杉へ下る分岐に着く。目の先の兜岳への坂を駆け上がると、石鎚神社の祠が祀られた頂上に出る。頂上は狭く眼下に仁淀川が蛇行して、その向こうに黒森山、遠くに筒上山や手箱山が見えている。分岐まで戻って夫婦杉方面へと下って行く。石灰石混じりの急坂は歩きにくい所があり、足元に注意したい。


                         兜岳頂上からの眺望

覆い被さるような屏風岩などの下を通る。斜面は風化して崩れた石灰岩が散乱していて独特の景観を醸し出している。だらだらと下って行くと右に下る夫婦杉の立つ分岐がある。道の入り口には山門のごとく夫婦杉の大木がそそり立つ。ここを下れば長い石段を経由して、第二駐車場の前に下り立つことが出来る。いわゆる古来からの表参道である。


                         夫婦杉とガレ場を下る

第三駐車場へは真直ぐ進んで少し登り返すと杉原神社の前に出る、後は往路を駐車場に戻る。横倉山は1000余年昔の平安時代末期に修験道場として開山され、以来三獄(みたけ)と呼ばれて日本48ヶ所の一つ土佐唯一の霊場とされた。歴史と伝説のロマンが漂う山である。

《コースタイム》 国道 20分(車)→第三駐車場 15分→杉原神社 20分→横倉宮 10分→御陵参考地
          10分→畝傍山眺望所 10分→空池 10分→住吉神社 20分→ 横倉宮 20分→三角点
          25分→兜岳 20分→夫婦杉 20分→第三駐車場 歩行時間 約3時間20分
          登山道 整備されているが急坂有り 難易度 1A345 駐車場 各登山口に有り
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