九州山岳紀行 No003-980503 英彦山(ひこさん) 1199m △1(英彦山)
                      福岡県添田町/大分県中津市 地図 英彦山(北西)  山岳紀行トップヘ


           コルから中岳を望む                        ブナ林の広がる山腹

英彦山1199m は福岡県の東南部に位置して、犬ケ岳などと共に大分県との県境尾根を形成している。日本三大修験場として出羽の羽黒山や大和の大峰山と共に栄えて来た霊山である。太古からの溶岩台地は長年の侵食で変化に満ちた深い谷や奇岩を形成している。私達は登山口の英彦山神社奉幣殿を目指す。そこから中岳に登って北岳に向かい高住神社へ下るコースを取る。鳥居を潜り延々と続く石段を登って行く。山の中腹に英彦山神社が祀られ、古くから修験の道場として上下の信仰厚く、所謂天人三千坊の遺跡は山中至る所に見られ、明治時代までは英彦山参りを目的とした英彦山講が九州の各地域にあった。 


        登山は神社の大鳥居から始る                   長い石段を黙々と登って行く

神仏合体の社であったが明治維新のとき、仏の方は解消され天忍穂耳尊を祭神にした英彦山神社となる。英彦山の名前の由来は御祭神が天照大神の御子、天忍穂耳命であることから「日の子の山」即ち「日子山」と呼ばれた。弘仁十年(819年)嵯峨天皇の勅により「日子」の二字を「彦」に改め、次に享保十四年(1729年)には霊元天皇の御祈願で 「英」 の敬称が贈られ「英彦山」と改称された。脇に杉の巨木と坊舎の並ぶ長い石段を登りつめると奉幣殿の前に着く。壮大な建物で鎌倉時代の作といわれ、国宝に指定されている。その朱塗りの奉幣殿は改装中であった。


         奉幣殿まで長い石段が続く                    境内には立派な建物がある

奉幣殿の横の鳥居を潜って石段を登るといよいよ英彦山の山懐へ入って行く。英彦山は北岳、中岳、南岳の三つの峰が相接して聳えており、南岳には一等三角点がある。鬼杉コースを右に分けて岩場の間をよじ登り、欝蒼とした千本杉の中を縫って、自然石で作られた急な石段を登って行く。薄霧が立ちこめて静寂とひんやりとした空気に触れて身が引き締まる。一ノ岳展望所を過ぎて中津宮前で一息入れる。きつい登りが続くが道脇に咲く季節の草花が目を癒してくれる。


         薄霧の千本杉の中の登り                       林床のホウチャクソウ

千本杉を過ぎる稚児落しに着く。ここは佐賀藩主の鍋島清久公が小さい頃、転落して命が助かったことからその名がつけられたという。この先急な登りはなく、稚児落しなどを経て登ってゆくと視界が開けてきたが、辺りは倒木の残骸が多く平成2年に九州を襲った、台風19号の爪跡が無残な光景を残している。そこからしばらく登った所に広場があり「産霊神社」がある。行者堂で少し離れて水場もあり、一息入れるには良い場所だ。


           行者堂の広場で休憩                       行者堂から石段が続く

文武天皇の時代、往古高皇産霊尊鎮座の旧地であるという信託があり、聖武天皇、天平12年頼願によって建立されたと伝えられている。中ほどの石畳は護摩壇の跡であり、修験道時代は役行者の木像が安置されていた所。ここから更に木の鳥居を潜り石段を登って行く。山頂までずっと石段が続くが、昔人力でこれだけの作業は並大抵のことではなかっただろうと想われる。その石段も年月の流れと共に風化し、傾いてずり落ちそうになっているものもある。息を弾ませ急な石段を上り着いた所が中岳1190m の頂上で上宮の立派な社殿が建つ。

         随所に台風の爪跡が残る                      中岳頂上の英彦山上宮

参拝を済ませ記念写真を撮る。ここからは九重や由布岳方面の展望が素晴らしいそうだが、今日はガスがかかって眺望はないのが残念だ。一等三角点のある南岳は目の先だが、何故かリーダーは行こうとは言わない。神社のすぐ後ろ側は一段下がって広場となっており、売店と休憩所がある。広場の北側には大きな柱の山頂標識が岩の上に建っている。一升瓶を背負って来た酒好きのリーダを先頭に乾杯をしてバンザイを挙げる。頂上に響き渡る大合唱に英彦山大権現様も珍客に驚かれたことだろう。


          巨岩の間を北岳への下り                      中岳頂上での記念撮影

中岳より稜線を東北へ岩の間の急斜面を下る、途中のブナ林が山腹一面に見事である。振り返ると今越えて来た中岳が遠ざかり、稜線を少し登り返せば北岳の頂上に着く。北岳には祠が祀られており、ちょっとした広場になっていて大勢の登山者が休んでいる。北岳からは凄く急な下りで滑らないよう緊張しながら下って行く。望雲台への分岐を見送って、逆鉾岩や筆立岩など樹林の間に塔のよう屹立する奇岩が壮観である。


         樹間に奇岩がそそり立つ                      英彦山講の団体に出逢う

六根清浄(ろっこんしょうじょう)を唱えながら大勢の白装束の団体が登って来る。先達の懺悔(ざんげ)懺悔の声が山中に響く。その後に続く団体が六根清浄と合唱しながら登って来る。団体が通り過ぎるまで暫らく道を開けて待っていた。英彦山は今もこうして信仰の山として息付いているのが感じられる。


         奇岩を背にする高住神社                      満開のツクシシャクナゲ

大きな杉が見えて来ると高住神社に下り立つ。境内の大杉は見事で天を突く巨木に圧倒される。側には栃の大木もありシャクナゲが見事に咲いていた。高住神社は豊前坊とも呼ばれ豊前、豊後の開拓神であり牛馬悪疫火難の守護神ともされる豊日別命が祀ってあり、多くの参拝客が訪れている。参道の石段を下って行くと山側に清水が流れ出ている。水は石で造られた獅子の口から出ており今川の源流とある。


          杉の巨木が茂る高住神社                    今川の源流とある湧水

鳥居を抜けると英彦山町から薬師峠へ通ずる車道に出る。ここから車道を少し左に辿って遊歩道に入り、戻りは4キロ先の英彦山神社下の始発点の駐車場まで、九州自然歩道となった杉林の中の昔からの石畳の参道を歩いて行く。林の中の静かな石畳の道は自然が一杯で気持がよい。石畳の道を過ぎると県立少年の家やスキー場やキャンプ場の側を通って、県道を横切って行くと別所駐車場に着く。そして私達は次の目的である釈迦ヶ岳へ向かった。             釈迦ヶ岳へリンク

《コースタイム》別所駐車場 15分→奉幣殿 30分→中津宮 40分→中岳山頂 20分→北岳山頂 55分→
         高住神社 60分→別所駐車場
   登山道 中岳岩場の下り、北岳直下の下りは注意 歩行時間 約 3 時間30分 難易度 12B45
ページの最初に戻る