四国山岳紀行 No137-980322 登岐山(ときやま) 1446m △3(下川峠)
                           高知県本山町/土佐町 地図 本山(北西)  山岳紀行トップヘ


                         法皇湖から見た登岐山

登岐山1446m は四国脊梁山脈の一角を形成し、最高点の1477m の大登岐山は岩峰となって地元の人は天狗岳と呼んでいる。周囲の山に突出て屹立するその山容はどこから見ても登頂意欲を掻き立てられ、一度は登ってみたいと思っていた。しかしこの山は奥深くあまり登られていないらしく登山口も判らずに、今回当てずっぽうに高知県側からアタックしてみることにした。

地図を確認すると汗見川上流の支流の桑ノ川がこの山の懐に向かって延びており、それに沿って林道が奥深く入っているようなので、車で行ける所まで入り、頂上を目指すことにした。伊予三島から国道 319号に入り、法皇随道を抜けて金砂湖に架かる赤い平野橋を渡り、富郷方面へ県道 6号線を 3キロほど進んで行き、富郷橋の手前から伊予三島本山線に入って南下して県境の白髪随道を抜けて 7キロほど下ると、汗見川に架かる桑ノ川橋を渡って 桑ノ川林道を進んで行く。

最終の民家を過ぎると舗装が切れる。更に 1キロほど進むと谷は深くなり、右奥に 「赤滝」 と称する滝が現れる。道脇には滝の説明板があり、「土佐の名水 赤滝で秋には絶壁を彩る赤の競演 四国を東西に貫く吉野川には、本山町内でいくつかの支流が注ぎこむ。その支流の一つ、汗見川の上流の桑ノ川の流れが眼下にある。


                         長い瀑をかける赤滝

対岸の赤滝は、岩肌が赤いコケで彩られ、周囲の木々の緑の中で、一際目を引いている。これが秋になると赤を競うことになる。山々の静寂の中にゴウゴウと滝音が響いている。独自の景観神秘が味わえる秘境である。豪雨の後には、この滝の右手の断崖に、更に巨大な滝が姿を現す。その姿は二匹の龍が奔放に戯れるごとくである。

自然が織りなす景観は、我々の想像を絶するものがある。またこの赤滝より落ち流れる水は、昔、兵庫介敵七騎を斬り捨てたという『斬込渕』を清め、汗見川本流に流れ込む名水である」  と書かれている。このときは水量が少なかったが、流れ落ちる水が多ければその高さからにして見ごたえのある名瀑となろう。

更に 6キロほど進むと右に分岐している林道を見送って崖からの落石の多い道となり、更に右に分岐する林道があるが相当荒れており、入り口にチェーンがかかっている。この道は兵庫山の方に延びているようだ。ここから林道は左にカーブして切り割りを過ぎると道は平坦になり、登岐山から大己屋山に伸びる尾根の東側をトラバースして行く。


                         林道脇にある登山口

兵庫山へ向かう林道分岐から2 キロあまり進んだ所に、林の中のガレ沢の入り口に何やら古いプレートの壊れたものがあったが、そのまま通過する。桑ノ橋からここまで10キロ。更に200mほど進んでいると、奥から年配のお爺さんが軽貨物の作業車で下って来たので、登岐山の登り口を尋ねてみた。 「あの天狗山ならここから少し戻った所に登り口があるきん、そこから峰に出て稜線を外さずに行くといいが、稜線は薮で今は道は無いぞい」 との貴重な情報を得た。更にこの林道は少し先で行き止まりになっているとの事。


         稜線に向かって登って行く                    権木帯に変わると稜線に出る       

引き返すと先ほどの林の中の沢のようなガレ場が登り口らしい。入り口には古い壊れかかったプレートがあったが既に文字は消えていた。少し先の広くなった路肩に車を置いていよいよ登りにかかる。湿って苔の生えたがらがらの空沢のような場所を過ぎると、桧の疎らな植林の中を高度を上げて行く。足元はガレ場が多くあるが踏跡は案外確かりしている。植林が切れて権木帯の急坂を登りつめると稜線のコルに出た。


         南側に大己屋山のピーク                      東側に工石山と白髪山

稜線を越えて踏跡は更に西に下っている。南には大己屋山の尖ったピークが聳えている。北側にはこれから向かう天狗岳が稜線の奥に聳えており、これから薮を漕ぎながら未知のあの山まで行かなければならないと思うと、身が引き締まるのが感じられる。稜線は権木混じりの背丈ほどのスズ竹が覆い茂っており、これからの長い薮漕ぎの稜線歩きが思いやられそうだ。足元の見えにくい踏跡を笹を掻き分けながら進んで行く。


                      登岐山を目指して薮を漕いで行く

倒木も多く行き手を塞いでおり、最近は殆んど人が立ち入っていないようだ。コルから登りきって笹の少ない岩尾根を登った所が最初の小ピークで、木材搬出基地の跡があった。ここからは東に視界が開け、谷を隔てて工石山から白髪山にかけての稜線がよく見えている。行く手には目指す天狗岳が霧氷を纏って手招きしている。この辺りから木々の枝は霧氷が濃くなって一面に白い花が咲いたような中を進んで行く。



                      うっすらと霧氷のかかった中を行く

踏跡は尾根を少し東側に外して行くような所もあるが、あくまでも忠実に尾根を進んでいくよう注意したい。小さなアップダウンを繰り返しながら薮をこいで行く。四番目のピークに大岩が行き手を遮る。踏跡は岩場の西側を巻いてシャクナゲの多い岩場の上に出る。ここからは笹の深い急坂となり、息が切れだす頃、やっと三角点のある登岐山の頂上に飛び出す。



                    立ちはだかる大岩は左側を巻いて行く

この辺りを源流とする下川川が早明浦ダム湖に注いでいる。その上流には下川という集落があり、県境を越えて伊予三島富郷の落合集落に至る峠道がこの山の西側を通っており、国土地理院の地図に今でも記されているが、モーターゼーションの発達した現在は通行する人も無くなり廃道と化している。その下川峠と称号される三角点は一坪ほどの笹の中の山名標識も無い空間にひっそりと佇んでいた。


         薮の中にひっそりと三角点                     猛烈な薮を掻き分けて進む

ここまで来れば天狗岳は眼前である。しかし密生した背丈以上のスズ竹と権木が行く手を拒んでおり、分け入る気がしないほどの薮である。スズ竹もこれまでのとは違い大型で茎が太く木のように硬い。分け入るとびしびし跳ね返って顔を叩く。薮漕ぎは慣れているがこれには翻弄した。天狗岳の取り付きまでは200mほどだが薮漕ぎに20分かかってやっと天狗岳の崖の直下に着く。


          三角点のある登岐山                       大登岐山頂上は岩場                 

見上げると尖った大岩の重なる岩峰が天を突いている。なんと魅力的な岩峰だろうか。20m あまりの崖を木や岩に掴まりながら慎重に登って行くと、桧の白骨に付けられた古い木のプレートに大登岐山1446m と記されていた。ここで始めてこの天狗岳が大登岐山という名であることを知った。山頂は切り立った岩峰で尖った岩石が重なり足場が悪い。しかしこの高度感溢れる開けた眺望は第一級である。


                      頂上からは第一級の眺望が展開する

登岐山という山名はこの頂きに立って理解できた。ここから山並は今辿って来た稜線が大己屋山方面へ続く峰と、黒岩山を経て野地峰方面に続く峰とに大きく分岐しておりその意味が頷ける。苦闘の末に辿り着いた頂上は感激もひとしおである。私達は精一杯の万歳を三唱した。岩峰は北から南にかけて切れ落ちており、南東方面には県境の山並から工石山や白髪山が聳え、奥には剣山系もうっすらと霞んでいる。


                         あまりの爽快さにこの通り

南側は今越えて来た峰の向こうに大己屋山、鎌滝山、吉野川を挟んで岩躑躅山に続く土佐の山々が連なり、眼下に吉野川が蛇行する。西側には野地峰から続く東光森山、大座礼山へと脊梁の山々が続き、奥に石鎚山系が霞む。北側のテラスに立てば赤石、峨蔵山塊から法皇山脈までが眼下に納まる。私達は暫らく我を忘れてこの眼下に広がる雄大な眺望に見とれていた。

《コースタイム》 桑ノ川橋 45分(車)→登り口 25分→稜線 40分→三つ目のピーク 40分→登岐山三角
          点30分→天狗岳頂上 15分→登岐山三角点 1 時間25分→稜線コル 15分→登り口
          35分(車)→桑ノ川橋 歩行時間 約 4 時間10分 難易度 1234D→難
          駐車場 無 登山道 無
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