四国山岳紀行 No117-970608 天狗森(てんぐもり) 1295m △1(天狗森)
                         高知県安芸市馬路 地図 土佐魚梁瀬(南東)  ページの最初に戻る


                       魚梁瀬湖の西に聳える天狗森

天狗森(1295m)は高知県安芸市馬路にあり、丸山団地から魚梁瀬ダム湖の西方に聳えていてよく見える。頂上付近は原生林に覆われ、盛り上がった山頂はすぐそれと判る。登山コースはダム湖に架かる魚梁瀬大橋の手前から、すぐ左の谷山線に入って 4 キロほど進むと営林署(現在は安芸森林管理所)のゲートがある。ここから右の林道を 3キロほど登ると索道のワイヤーの張られた所に登山口がある。


                         林道途中にある登山口

林道終点から500mほど手前で、ここから頂上までゆっくり歩いて 2時間ほどである。頂上まで2940m と書かれた小さな案内板がある。登山道は植林の中をじぐざぐ繰り返し、索道のワイヤーの張られた伐採跡に出たりして、頂上近くになると原生林の中を行くようになる。原生林の中のスズタケが深くなってくると頂上は近い。スズタケの間を潜り抜けると頂上に出る。


           頂上近くの原生林                          天狗森頂上にて

頂上には一等三角点と国土地理院の標識があり、頂上からの展望はガスってよく見えないが、北側と南側に視界が開ける。南側には野根山の山並み、東側と西側はダケカンバ、リョウブ、クロモジなどの雑木で視界が利かない。僅かに開けた北側には谷を隔てて稗己屋山が見える。暫らく休憩して下山に移る。振り返ると深い樹林に覆われた天狗森の頂上が印象的であった。


                     途中の切り開けから魚梁瀬湖を望む

天狗森には馬路の金林寺を空海が創建するとき、天狗が邪魔をしたので、空海が天狗森へ追い払ったという山の由来がある。今回は親友のTさんと二人でこの山に登ったが、その天狗に散々からかわれた登山となった。Tさんが予め魚梁瀬の営林署にゲートの鍵の番号と開け方を教えて貰っていたので、登山口までの 3キロの長い林道歩きは免れたが、この後とんでもない失敗を遣らかしたのである。


                        林道終点から登り始めた

ゲートの鍵はなかなか開かず、10分ほどかかってやっとゲートを開けて右側の北谷林道に車を進める。林道を 3キロほど上って、そろそろ登山口が見つからないかと車を進めていると、前方に索道の木材運搬用のワイヤーが垂れ下がって道を塞いでいる。このままでは車が進めないのでTさんにおりてもらってワイヤーを持ち上げてもらい通過する。側に登山口の小さな標識があったが二人ともワイヤーに気を取られて、気が付かなかったのがいけなかった。


                           林道終点の沢

そのまま知らずに500mほど林道をつめると、林道は終点となって流木の堆積した沢に突き当たる。手前に駐車スペースもあって登山道? が山側に登っている。しかし標識が見当たらない。大抵、百山の登山口には何かの標識があるのだが、おかしいと思いつつ登って行く。要所の木にも目印のテープが巻いてあり、沢を渡ると道は左右に分かれている。


         沢を渡って道は二分する                        植林帯の中の登り

天狗森は確か西上にあるので西に延びている道を行くが、段々と道は細くなり、植林帯の中の踏跡が、ややともすると消えてしまう。植林の木々には目印のテープが巻いてあるが、あまりにも数が多い。急傾斜の植林帯の中を徘徊するが道らしいものは見当たらない。分岐点まで引き返して今度は反対側の道を行く。しかし天狗森とは反対の方向である。


                         苔むした岩石が一面に

どうもおかしい、天狗森はあちらの方向だからこの道は違うんじゃないか、また元の林道まで引き返して天狗森の方向へ分け入って行くが、また踏み跡は消えてしまう。さっきの右の道が確かりしてるんで正しいんじゃない、また先ほど下りてきた道を進むが、だんだんと地形的に天狗森が遠ざかって行く気がしてならない。そのうち道は二分して一つは谷へ下りて東側の山へ向かっているようだ。


          ガレ場を直登して行く                        爽やかな緑が広がる

一つはここから北へ稜線に向かって直登しているようである。天狗森は西にあるのでここを稜線に向かって登って行けば、途中から西に向かう道があることを願いつつ登って行く。相当登っただろうか、確かりしていた道も段々怪しくなるが切り開けもあり、人が入っていることは確かだ。どうも私達は木こり道に迷い込んだようだ。少し進むと西へ向かっている細い道が見つかったので分け入って行く。


           原生林の中の登り                        樹間の間に稗己屋山

一帯は桧や杉の植林帯であるが、もう何年も手入れがされていないようで、細い道も所々決壊しており、そんな所を巻きながら踏み跡を頼りに、薄暗い植林帯の中を西へと進んで行く。どれくらい歩いただろうか、岸壁に突きあたった。踏み跡は岩壁沿いに南に少し下っており、転石の多い沢に出た。どうやら林道終点の沢の上部らしい。天狗森は確かにこの上にあると判断して、ひとまず一本立てながら、これからどちらに向かうか周りの状況を判断する。


                          頂上に一等三角点

沢を渡った向こう側にも踏み跡が続いているのでそれを辿って行く。周囲は原生林に変わって林床には一抱えもある転石が、緑の苔を纏って一面に敷詰めたように転がっている異様な場所に出くわす。ややともすると踏跡は消えかかり不安がつのる。とうとう踏跡も無くなって転石と倒木の多い急なガレ場の斜面を登ることになった。石や木の枝に掴まりながら100mほど登ることよろしく、待ち受けていたのは例外なく行く手を拒む高い崖であった。


                          クロモジとウツギ

もう急な斜面を後戻りする訳にはいかず、崖の下を右に巻くことにした。岩と薮混じりの崖下を200mほど進むが、道無きこのような所を歩くのは案外疲れる。安全な場所で一息入れる。周囲は深い原生林で大きな木に見たこともない花が咲いており、深山の気配が漂う。パンとポカリで一本立てて出発する。崖ふちを回り込んだら転石の多い水の無い涸沢に出た。


             ガクアジサイ                           人工林の切り開け

先ほどの沢の上流だろうか、転石の沢の中を上へとつめて行くと、沢が二つに分かれる。一本は真直ぐ上へ延びているが、天狗森の頂上はこの方向と判断して、左上へ入っている支沢へ取り付くことにした。進むにつれしだいに沢は急になり、最後は両岸が切れ落ちて行く手は崖となる。獣道が左の崖を登っているのを見つけて、私達もそれを頼りにブッシュを掻き分けて木の枝に掴まりながら登って行くが、急傾斜なので思うように前進できず、挙句の果てにシャクナゲのブッシュに悩まされる。


                          人工林の切り開け

急傾斜のシャクナゲの枝に掴まりながら、左へ行ったり右へ行ったり左右往来しながら前進する。シャクナゲ林の下は下草は無いが、大抵苔むした柔らかい土で、ぼこぼことした斜面に根が絡んで歩きにくい所である。特に私は例の重いビデオカメラと三脚を持っているので、片手で枝に掴まって自分の体を支えながら、カメラを保護しなければならないので緊張この上もない。どこまで続くぞこのアルバイト、疲労と焦りが全身を覆い始める。


                         切り開けからの南望

どのくらいシャクナゲのブッシュを登っただろうか、足首と腕が痛む。凄く長い時間に感じられた。やっとシャクナゲのブッシュを抜けると、今度は背丈以上のスズ竹のブッシュが待っていた。我武者羅にスズ竹を掻き分けながら進んでいると、上の方で 「オーイー、登山道に出たぜー」 というTさんの声が聞こえてきた。その瞬間、緊張した全身の力が抜けるのが感じられた。確かりした稜線の登山道に飛び出す。

正規な登山道はやはり歩きよい。長道を歩いているときに、車に乗せてもらったような安堵感である。200m位進むと一等三角点のある頂上の広場に出た。やったというより疲労のためか、弁当も食べる気がしない。道を間違えたお蔭で二時間足らずで登って来れる所を、四時間もかかっている。私一人であれば心細くなって途中から引き返しただろう。大きな失敗を遣らかしたが、これも一つの経験になったと思えばよいだろう。地図を持たずに山に入ったために、天狗森の天狗にからかわれた印象深い登山であった。

《コースタイム》 登山口 1 時間30分→頂上 1 時間→登山口 今回 林道終点 3 時間45分→頂上
          50分→登山口 歩行時間 約 4 時間35分
          登山道 よく踏まれているが薮が茂る所あり 歩行時間 約 2 時間30分
          駐車場 無 林道終点手前に駐車スペース有 難易度 12B45
          天狗森.稗己屋山.西又山.宝蔵山.甚吉森.方面問合せ先
           (安芸森林管理所魚梁瀬事務所TEL08874-4-2311)
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