四国山岳紀行 No075-950518 不入山(いらずやま) 1336m △1(不入山)
                             高知県津野j町 地図 王在家(南東)  山岳紀行トップヘ


                        黒々とした山容の不入山

高知県須崎の西方30キロ国道438号線と197号線の間、津野町中部にひと際高く黒々と聳える不入山(1336m) がある。この山は藩政時代からお留め山として一般の入山が禁止されていたらしく、不入山といわれるようになった。別名黒森と呼ばれるように、黒々とした山容が恐れられていたのだろう。またこの山は最後の清流と呼ばれる四万十川の源流地点にもあたる。


                      矢筈トンネル東口から左へ進む

登山ルートは幾つかあるが仁淀村境の矢筈トンネル東口から、舟戸へ向かう村道を 1キロ入った所から、不入山に向かう営林署(現在は四万十森林管理署窪川事務所)の林道入口が登山口となっている。この林道は一般車は通行禁止となっており、林道を 3キロほど登山口まで歩かなければいけない。林道入口には「これより専用林道で一般車両は通行できません。


                        登山口になる林道入口

不入山(1336m) へ登られる方は徒歩でお願いします。現在地より林道終点まで 3000mで約60分です。また林道終点から不入山山頂までは 1300mで約60分です。(現在地点標高 910m) 須崎営林署」と記された案内板と不入山周辺概念図が立っている。ここからは不入山の前山を巻いて、これから歩いて行く林道がコルを越えているのが見えている。


                      林道から見える鳥形山と鶴松森

林道脇にはオンツツジ、バライチゴ、ジシバリ、などの花が見られ、フキなども群生している。林道は間もなく林に入り視界が遮られるが、ときに林が切れて鮮やかな光景が展開する。中でも目を奪われるのは石灰採掘の鳥形山の姿である。また東には優稚な姿の鶴松森が美しい稜線を見せている。山肌にはこの時期、シャクナゲのピンクの花が新緑の中にひと際映える。


         新緑に映えるミツバツツジ                     林道終点から見た不入山

林道の終点に着くと深い緑に覆われた不入山の山頂が目に飛び込んでくる。ここからいよいよ山道となり不入山の懐に入って行く。林の中の小道を辿ると沢筋に着く。ここから登山道は沢筋コースと新しく付けられた尾根コースとに分かれる。今回は沢筋コースを登って行く。自然にできたガレ場の登山道の沢筋には、ブナ、カエデ、ツガ、ヒメシャラなどの大木が上空を覆って立ち、風倒木が朽ちかけている。


                         自然林が素晴らし

沢の岩石は一面苔むしてひんやりした空気、深山幽谷の気配が漂う中を登って行く。滑りやすい石道に注意しつつ登って行くと、壁のような巨岩が姿を見せ始めた。苔の付いた岩肌、その岩壁に常緑樹が太い根を絡ませ、枝は沢の上まで伸びている。見上げるとこぼれ日がきらきらと輝いている。そんな中を足元に注意しながら一歩一歩登って行く。


           深山幽谷を登って行く                      深山に咲くゴヨウツツジ

オーバハングした岩壁の下を巻いて沢筋を登り切ると、先の尾根コースとの合流点の尾根筋に出る。不入山山頂へ550m約25分と記された道標が立っている。周囲にはシャクナゲやアケボノツツジ、ヒカゲツツジ、ゴヨウツツジが枝一杯に花をつけて目を楽しませてくれる。スズタケの中を抜けて岩の多い権木帯の中をアップダウンを繰り返しながら行くと、樹齢数百年はあろうか「不入山太郎坊」と木札のかかったヒノキの巨木が目に飛び込んでくる。


         深山の感じの尾根筋を行く                    太郎坊と称する桧の巨木

尾根筋には数百年を生き続けてきたツガやヒノキ、コウヤマキ、ブナなどが岩に根を絡ませ、深山の感じが漂う中を行く。頂上付近には熊が出没するという注意書きがあったが、無気味な感じが漂う山である。もしかしたら薮の中から熊が現れるのではないかという恐怖心にも駆られながら進んで行くが、所々に美しく咲くアケボノツツジなどが少し気分的に明るさを与えてくれる。


         明るさを感じるアケボノツツジ                    山頂は林に囲まれている

岩場を越えて道は平坦になってくると切り開けの頂上に着く。頂上には一等三角点があり、周囲は木立で展望はあまり利かなく、ブナやリョウブ、カエデ、ナラなど、やっと新緑が展開したばかりの木立の間から、僅かに南東側と北東側に視界が開ける。北東にはトレースされた鳥形山、その奥に石鎚山系が見えている。南東側は山並の向こうに太平洋が鈍く光っている。飛び出た半島は須崎あたりだろうか。


                        一等三角点と石鎚神社跡

頂上の片隅には今は麓に移されている石鎚神社の石囲いだけが寂しそうに残っていた。最近は訪れる登山客も多いのか、それでもお賽銭の一円、五円、十円硬貨が数十枚供えられていた。往きは気が付かなかったが、往路を引き返す途中の岩場からは、北西側に天狗高原のなだらかな稜線が手に取るように見えており、青空の下に絵のように美しく映える。岩場を下り往路を下って行く。


         岩場から天狗高原を望む                       老樹が茂る稜線付近

不入山は四国カルスト自然公園の区域内にあり、その多くが天然林に覆われた深山の趣き深い山である。不入という不気味な山名の由来については、土佐藩の御留山であったと推察される。御留山として長く人々の入山を拒み続けた山は、豊かな自然が保たれ、近年、学術保護林にも指定された。その豊かな森の木々が育んだ水の一滴が川となって流れ、清流四万十川の源流点となり得た山としても有名である。

《コースタイム》 登山口 50分→林道終点 10分→沢分岐 30分→稜線分岐 25分→頂上 20分→
          稜線分岐 25分→林道終点 40分→登山口 歩行時間 約 3 時間20分
          駐車場 林道入口に4〜5台 登山道 よく踏まれている 難易度 12B45
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