四国山岳紀行 No058-940807 天狗塚(てんぐづか) 1812m △無
                      徳島県三好市東祖谷山  地図  久保沼井(北東)  山岳紀行トップヘ


                          イザリ峠(天狗峠)付近からの天狗塚

徳島県三好市東祖谷山と高知県香美市物部との境に、ひと際高く美しい峰を並る剣山系がある。東端には三嶺が聳え西端には三角錐の天狗塚(1812m)が聳える。天狗塚へは高知県側からは三嶺と同じく、国道 195号線を大栃に向かい、大栃から西熊渓谷への県道を25キロほど遡ると、光石登山口に着く。ここから三嶺への分岐がある八丁小屋までは約1時間の行程である。


         キツネノカミソリの群生に出あった                 暑い時節緑の日陰はありがたい

登山道に入るとこの時期、キツネノカミソリというヒガンバナ科の花が道脇に彩を添える。登山道は八丁小屋分岐まではよく整備されていて歩きよい。堂床野営場から河原に下りると、ブヨが群がってきたので登山道に駆け戻って走る。それでも数匹後を追ってくる。吊橋を過ぎた頃いなくなったので普通に歩きだす。清水を引いた堂床小屋に着いた。小屋の前にパイプで引かれた清水はありがたい。冷たい水で喉を潤す。


                          三嶺への分岐にある八丁小屋と標識

右に三嶺への道を見送り、カンカケ谷沿いの緩い道を暫らく進んで行く。この谷川の水量は多く、この渇水期に他のダムは干し上がっているのに、下流の永瀬ダムは満々と水を湛えており、羨ましい限りである。そしてこの山の深さを感じる。やがて沢を渡って左岸に取り付く。沢沿いの急坂をじぐざぐ登ること3 時間近く、うんざりする頃オカメ小屋直下の水場に着く。この暑い時節の冷たい清水はありがたい。


        渡渉点の沢ここから左岸に渡る                オカメ小屋下の水場

少し上には完成間近の建て替え中のオカメ小屋があった。水場で少し休んだせいか足が攣ってきた。足の筋肉がぴくぴくと痙攣しだして太腿が硬直して激しい引きつりが始る。冷や汗が出たが慌てず笹の上に静かに横になる。この急坂で休みも取らず足の筋肉を酷使したためだろう。ふくらはぎが攣ったことはあるが太腿が攣ったのは初めてだ。稜線を目の前にして残念である。このまま動けなくなるのかと不安に思ったが、オカメ小屋が目の前にあるのと人がいるので少しばかりは安心する。10分ほど笹原に横になっていると攣った足が正常に戻ったので出発する。


         オカメ小屋は建て替え中だった                     稜線から白髪山を望む

稜線に出て振り返ると今登って来たカンカケ谷の向こうに白髪山が大きく聳えている。西にはこれから登る天狗塚に至る稜線が延びている。手前には亀の形をした大きなオカメ岩があった。シモツケソウ、タカネオトギリソウ、イブキトラノオ、ツリガネニンジンなど、足元には可憐な高山植物の花が風に揺らぐ。稜線に出て天狗塚までは1時間ほど、始めは笹原の斜面を行くが、権木帯の中に入ると深い笹の中を泳ぐように進んで崖ふちを通り、広い高原に出る。


                         稜線に咲くシモツケソウとタカネオトギリソウ

アキアカネが舞う高山植物の咲く快適な稜線をつめると、祖谷側からの登山道の合流点の標高1770m のいざり峠に着く。ここからの眺望は良く、眼前に広がる牛の背高原の左に、これから向かうピラミット型をした天狗塚が手招きしている。南側には谷を隔てて広大なスロープの綱附森が横たわる。東側には峰続きの西熊山の向こうに三嶺が聳える。そして北側には矢筈山などの山塊が重なる。笹原に佇み暫らく雄大な眺望を楽しんだ。



          イザリ峠付近からの天狗塚                 峠に立つ標識ここから祖谷へ

いざり峠から天狗塚までは30分足らずの行程である。天狗塚の登りは少しきついが長くは続かない。三角錐の頂上からは 360度の眺望が展開する。高い分いざり峠以上の眺望である。西に延びる広大な高原の牛の背は、時間があれば散策してみたい所だ。眼下に先ほど登って来た原生林に覆われたカンカケ谷、その向こうに白髪山が秀麗な山容で聳えている。天狗塚から三嶺まで快適な縦走路の山並が続いている。一度は走破してみたいコースだ。ここからは先ほど側を通ってきたオカメ岩が小さく見えている。


           天狗塚山頂は三角点は無い                  イザリ峠から見た綱附森

雲が湧き始めて来たのとブヨの攻撃が始まったので、すばやく下山に移る。オカメ小屋まで帰ってくると雲が広がり、ゴロゴロと雷音が聞こえ始めた。暑い夏に起きる熱雷の始まりである。オカメ小屋で避難してもよいが、時間が惜しいので早々にカンカケ谷の原生林の中を駆け下って行く。原生林に入ると稜線辺りで雷光が走り、雷音がこだます。薄暗くなってぱらぱらと雨が降り出したが、大した事はないようだ。稜線付近では雷雲が覆って雨のようだ。稲妻が走りだーんと落雷の音が響く。今ごろ稜線に居たら生きた心地がしなかっただろう。沢まで駆け下ると雷音も止んで空が明るくなってきた。下山してみると、いつの間にかブヨに腕を7箇所刺されていた。2週間ほど痒い思いをした天狗塚であった。

《コースタイム》 南国インター 40分(車)→大栃 40分(車)→光石登山口 1 時間→八丁小屋 1 時間→
          沢渡渉点 3 時間→オカメ小屋 50分→イザリ峠 30分→天狗塚 30分→イザり峠 50分
          →オカメ小屋 1 時間→沢渡渉点 30分→八丁小屋 50分→光石登山口
        駐車場 登山口に有 登山道 よく踏まれている 歩行時間 約10時間  難易度 123C5ページの最初へ戻る