紀行山岳日記 No023-910813 利尻山 1719m △2(利尻絶頂)
                              北海道利尻郡利尻町 地図 鴛泊(南東)  山岳紀行トップヘ


           海上からの利尻山                          長官山からの利尻山

利尻島は火山でできた周囲63km.の北海道の北の果てに浮かぶ火山島である。島の中央には利尻富士と呼ばれる利尻山が海岸から美しいスロープを描いて聳えている。島の北側玄関口である鴛泊港に向かう。三合目にある北麓の登山口にある野営場で幕営して、翌朝8月13日朝5時に出発する。しばらく遊歩道のような舗装道を詰めると、このコースの唯一つの水場である寒露泉水にて水筒に水を補給する。手の切れるような冷たい水が岩の間から流れ出している。この水は大変美味しく日本百名水のひとつに選定されているらしい。


         モミの広場で最初の休憩                         前山の長官山への登り

ここからは本格的な登山道となり、エゾ松やトド松の中を緩い登りが続く。周囲は霧が立ち込め遠望が利かない。2時間ほど登って周囲の林がダケカンバに変わると、霧が切れて雲海の上に出る。眼前には前山らしき峰が立ちはだかる。這松が美しいグリーンの絨毯を広げ、火山特有の大きな礫岩の中を登山道は急登する。高度がどんどん上って雲海が下の方に素晴らしい広がりを見せる。標高1218mの前山のピーク長官山に出ると、大きく視界が開けて今まで見えなかった利尻山の山頂が眼前に姿を現す。


            七合目付近の登り                          避難小屋からの山容

ここには無人の避難小屋が設けられている。ここから見る奥に雪渓を纏ったその美しい険しそうな山容に目を見張る。ここから尾根伝いに山頂まで2時間はかかりそうである。這松の中を時折りガスが吹き上げてくる。この辺りから周囲にはお花畑が広がってきつい登りを癒してくれる。リシリヒョウタンボクのルビーのような赤い実、リシリカブトの鮮やかな青紺色。高度が上がるに従い花の種類も目立ってくる。チシマリンドウの紫、イワギキョウの青、シコタンハコベの白、タカネナデシコの赤い花など、数々の高山植物が群落を作り、私達の目を楽しませてくれる。


            リシリヒョウタンボク                         オニシモツケの群落

頂上が近くなったのか火山特有のザラザラとした礫の中を歩く。滑りやすい急斜面にはザイルが張られており、それを伝いながら一歩一歩と登って行く。ガスの切れ間に青空が覗いて、下のほうに小さく沓形の街並みが見えている。麓から5時間近くかかってやっと頂上に立つ。頂上には弁天さんの祠が祀ってあり、頂上周辺は崩壊が激しく、足元から深い絶壁となって落ち込んでいる。気温は15、6度位か案外暖かく、風も無く絶好の天候である。


                              利尻山山頂

シュムシュノコギリソウ、レブンシオガマ、エゾイブキトラノオ、レブンイチゲ、イワギキョウ、チシマフウロウ、レブントウウチソウ、リシリリンドウ、オトギリソウ、エゾアズマギク、キオンなど数え切れないほどの色とりどりのお花畑が広がる。エゾイブキトラノオは内地のものより色が濃く大型である。レブンイチゲは葉が細く切れ込み、花数が多い。イワギキョウ、チシマフウロウは内地のものより色が濃く花が大きい。リシリリンドウは花が細く茎が長い。オトギリソウは花が小さく花数が多い。岩陰にはエゾツツジの濃いピンクの花が目立つ。


            山頂付近のお花畑                          目立つイワギキョウ

激しい気候に負けずに氷河時代から生き残ってきた高山植物は、この山特有の固体を作り出している。6月下旬から8月下旬にかけて、この山の短い夏は、ほんのつかの間に去って、間もなく山は激しい吹雪と結氷に覆われる。短い春を謳歌するように草花は一斉に咲き誇っている。頂上付近はお花畑が広がり暫らく我を忘れていた。東のルンゼからは心地よい風が時折り頬を撫でていく。去りがたい山頂だが祠の前で記念撮影をして正午下山開始である。


                       エゾキスゲの群落とリシリリンドウ

お花畑の広がる素晴らしい風景を堪能しながらガレ場を下っていく。オニシモツケとリシリアザミが大群落を作って風に揺らいでいる。下のほうにはエゾキスゲの黄色い花が緑の絨毯の中に群落を作っている。そんな風景を見ながら下って行くが良い所ばかりではない、ガレ場の下りは登りよりも技術を要する。足を置くたびにザラザラ滑って歩きにくい。また掘れ込んだ登山道にかかると火山灰で真黒に練られた所は靴が汚れるので抜き足で歩かなければならず、登山道は悪い所が多いのでピッチが上がらず、そんなわけで下りも案外時間がかかった。


          フェリー乗場から利尻山                       海上に浮かぶ利尻富士

しかし山の自然の美しさは第一級であった。四国からはるばる3000kの旅の果て、いま最北の山に登って来たのだという実感がひしひしと感じる。私達は後ろ髪を惹かれる思いで、鴛泊港を後に波穏やかな海上を稚内へ、フェリーのデッキから眺める利尻島は海上に浮かぶ利尻富士というに相応しい山であった。

《コースタイム》 北麓登山口 5分→甘露泉 40分→モミの広場 2時間→見晴らし台 20分→長官山 1時間→
          沓形別れ 30分→頂上 1時間30分→ 長官山 2時間→モミの広場 30分→甘露泉 5分→
          北麓登山口 歩行時間 約8時間 登山道 所々悪い 難易度 123C5